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tome VI - 紀行4
西丹沢今昔
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ユーシン沢出合にて
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![]() 西丹沢の思い出としては、何んと云ってもモチコシ沢の大滝で落ちた時の事である。パーティーは何人だったかあまり記憶がないが、岩燕四号によれば、昭和26年8月15日-17目西丹沢合宿、中村、笠原、内田、後藤、荒木、原田、松岡、三橋となっている。大滝を直登して、後から登ってくる者を確保するためザイルを岩角に巻きつけて、大丈夫かどうか試すためにぐっと体重をかけたらザイル(当時は麻であった)が濡れていたために固くなっていてよく締らず、スッポリはずれてしまったから、そのままもろに後ろ向きに落ちてしまった。夢中で両手両足を伸ばして背中を岩壁にこすりつけながら頑張ったら、小さい岩の突起に股がひっかかって止ったのである。正に奇跡としか云いようがない止り方であった。両足は滝に向ってぶらぶらしている。下手に動くと落っこちそうなので、背中と両手でじりじりはい上り、やっと安全な場所迄たどりついた。下迄落ちればもちろん即死は間違いないところだっただけに、よく助かったと思う。後で肘が痛むのを調べたら、大豆位の石が何個か肉の中迄食込んでいたから、よほど力強く岩壁を押えつけたのであろう。落ちた時は、私より見ていた人の方がもうだめだと思ったそうだ。この時の記録と、神の川合宿のまとめ(岩燕四号に記録)とを、山と渓谷杜刊の登山地図帳丹沢山塊に私の名で執筆したのが昭和29年7月出版された。定価180円である。掲載されたのはモチコシ沢、同角沢、神の川本谷、伊勢沢、日向沢、彦左衛門谷、若水沢、仏谷、小谷、大岩沢の遡行登攀記録である。この本は昭和33年7月丹沢の山と谷として定価150円で同社より再刊された。 西丹沢は、この他玄倉川の下降(中村、真野と三人)、同角沢の遡行(小倉と二人)、地獄ザリ(小倉、中村、後藤の四人)、等が記録に残っている。地獄ザリはタイム、登攀の様子の記録等か無いのでよく解らないが、夜になって鍋割山稜から馬鹿尾根を歩いた気がする。25年振リのユーシンは、西丹沢のなつかしい空気を胸一杯に味わうことが出来た。猛烈なやぶこぎをやらされた犬越路も、中川温泉から長者舎迄林道が開通している。機会を見て、こちらの方も通ってみたいと思う。難しい岩登りは出来ないにしても、西丹沢の山と谷を又歩いてみたくなった。同好(行)の志よ!! 西丹沢へぜひ行こうではないか。
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