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三ツ瀑附近の滝登攀ルートについて後藤正彦 |
白峯大滝の下に辿りついた私達はあたかも発電所の鉄管をブッタ切った様な勢で落下するこの滝の偉観に唖然とした。この滝は落日が極度にせばめられているゴルジユのため約 100メートル弱を岩壁に全然ふれないで筒状に落ちている。その景観は三ツ瀑中最もすぐれている。 ルート
湿った草付を四点支持でずり上る。四点支持とは変な形容だが実感である。この様な状態で12メートルばかり登ると片足を乗せられる小さな突起でバンドが消えている。ここよりテラス迄 20メートル弱は薄い逆層で一枚一枚の岩の厚さが 2センチぐらいなので脆く感じるが実際には相当の堅さを持っている。この滝で岩の感触を楽めるのはここが唯一の場所である、テラスは二人でゆっくり休める広さでここから見下す本流は白く泡を噛んで流れており高度感は満点だ。これより上の草付は極度に悪く、この滝の登饗中最悪である。湿った土が草の根によってかろうじてその急傾斜を保っている。所々にある草も手でつかむとすぐに抜けてしまうので確実なホールド、スタンスは一つもなく私達に恐怖の感情を抱かしめるに十分であった。草付と云うより泥付と云った方が当を得ており、私達はこの様な悪い泥付は今までの経験の中に見出せない。泥の中に穴を堀り泥のくずれないうちに次の泥の穴までに達していなければならなかった。この悪い草付も登攀するに従って傾斜もゆるくなり、その終った所は滝の落口と同程度の高さを持っている。ここよりはナメツタ岩をへずる事によって待望の落口に立つ事が出来た。ヤツタ!!ヤツタ!!お互いの健斗を握手で祝う。然し落日の上は依然としてゴルジュが続いており左岸は懸崖のため遡行不可能、落口と一メートルとはなれていない所を対岸に飛び移るのはしばらくの間躊露した。 間もなく捲道が尾無尾根からかすかに落ちているのを見出した。 登攀にワン・ピッチかどうしても 40メートル以上にぼるためザイルを 2本つなげるか又はザイルレスパーティの編成をせねばならない。私達は細沢の滝を攀るつもりでいたためザイルは持参しなかった。ザイルを使用するにしても、ハーケンの打てる様なリスもなくテラスにおいてもセルフ・ビレーする様な岩もリスもないたゆ(ママ)トップは相当に緊張を強いられるだろう。本谷を遡行する場合は縦走装備のパーティには、おそらく無理だと思われるから細沢の滝を登り尾無尾根を越えて本谷に降りるのが順当だろう。 |
落差が 60メートルを持って本谷に注入して来るこの滝は五段に分れている。上部の一段は滝壷よりは見えないため四段に見えるが実際には五段に分れて緩い傾斜を落している。景観の点から見ても技術的に見ても数段と白峯の大滝に劣っている。しかし白峯の大滝の雄大で男性的であるのに反しこの滝の優美で女性的であるのは好対象をなしている。 ルート 右手の上部はスラブ、下部は逆層の岩でその上を水が流れており傾斜も左手に較べて急なため左手にルートを選んだ。 最下段の滝壷を飛越えてスラブ状をなしているごく浅いガリーに入る。傾斜が緩いため簡単に登る。ここからは上部の三角形をなしている大きなクラックをホールドに草付の上部の岩をトラバースする。次は草付の中を降雨等の流水によって出来たと思われる泥の窪みにぷつかる。ルートはこの窪みを忠実に辿るか又は窪みの中ほどにあるテラスより河身よりの岩を登ってもよい。いづれにしても両ルートは上部で合する。ここより上は灌木が滝の上までビツシリ突出しているので左手は直登できないため上から二段目、下から見た時の最高段の滝壷を飛沫を真横から浴びながら河身をトラバースする。この上は流れより露出している岩をスタンスにして容易に落口に出られる。岩質は白峯の大滝に比して遥かに固い技術的には何等の困難を感じない。 |
三ッ瀑中最も高く滝は中央で急激に右に屈曲している。上部では滝はニツに分れ右の滝の方が水量が豊かだ。しかし数多くあるバンドの一ツ一ツを流水が糸をかけている左の滝の方が圧倒的に美しい。ニツの滝は中ほどで滝壷を一ツにしている。100メートルの高さの割に又傾斜の割には女性的な優美さを感じさせる滝である。 ルート この滝は未登のため何とも云えないが交流点までは左手の壁を攀登り上は河身づたいの側壁を登攀すべきだと思う。又この滝は他の二つの流れと異って登攀しても帰路が安定していない事も考える必要がある。帰路は灌木を利用してアプザイレンで降るか、又は本谷の右岸は滝の連続の事を考えると大唐松沢を相当に遡行しなければならないと思う。いづれにしても相当に困難だと思う。思つたままの事を書いたゞけで今度三ツ瀑を訪れた折りに是非登って見たいと思っている。 |
ルート 右手は完全なフェースで滝壷と接しているため登攀不可能、左手には三ツほど数えることが出来る。
少さく(ママ)まとまった面白い滝である。 |
おことわり:
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