平〜五色が原
発(9:30)〜釣り橋(10:30)〜刈安峠(12:35-14:20)〜五色が原(17:00)〜五色小屋(17:40)
晴一時小雨。
Nの病の為に更に一日沈殿して、元気いっぱいで出発する。
釣橋は、直径5cmもない薪の様な木が、針金のように細い線にさしわたしてあるだけであった。さびたワイヤーが二本、上に釣られ、足の方は、両方に五、六本の針金、真中にはない。一本の針金が、ワイヤーとの間に手がかりとしてついているが、所々ない。流れは、山の中にしては、真緑になっている位深く、しかも急流であるので、橋を渡っていると、どんどん下へ流されるみたいである。しかも前に通ったある大学に大分こわされていたので、これを渡るのに一時間位かかった。
二十三日に作った背中のたこの為に、荷を大分少くしてしまい、重いテント等を上に持ってもらったので調子[抜けあり。ママ]
十二時半頃、刈曳峠へ着いた。立山が樹間に見える。烏帽子のとんがりも。しかし、昨日は、飯を食いすぎて足りなくなりそうなので、今朝の飯は少なく、木の根元に荷を下した。そして文句を云いながら、ミルクをわかした。ガックリきたので、晝抜きのつもりだったが飯盒一本の飯を六人で食ったが、登り始めると、さっきより腹が減って休む方が多くなって来た。
ある岩陰へ来て休むと、ついにストを起してしまった。向い側には、赤い肌を見せて、いかにも崩れそうな岩の山、針ノ木岳がみえる。いくら、ストを起しても行くよりしょうがないということになり、一時間位して動き始めた。さっきよりも急いで、一直線だ。グングンと高度は高まる。木が低いので暑い。
ちょっと展望の良い所へ来ると、Kさん等の発言”いゝ所だ”と云うので、すぐ座り込む。槍も見えてきた。大分平らになってきた。足先をみつめて歩いていると、前からすーっと涼しい風が吹いてくる。ふと前を見てみると、広大な、ものすごい広い草原だ。先の方には鷲羽岳が見え、雪渓がある。はるか向うに小屋が見えた。芝生のような小さい草間に咲く小さな、可憐な花が疲れ切った我々の身心を慰めてくれる。
勇気百倍して、細い道をたどり、ちょろちょろ流れる小川を越えて、我々は適当なキャンプ地に着いた。雨が降ってきたので、テントを張って入った。すぐにやんだので、辺りの偃松の枯れた枝をいたゞいた。火をつけ、鍋に飯の半分を入れて、味噌をたくさん入れて、まずいおぢやにしようと思ったんだが、みんなよく食ったこと。暖いので、とてもうまい。
黒部川の平にいた二日は、あれでうるさくさえなければ避暑にはなかなかいゝんだが、こゝは又何と寒いことよ。とてもたまらない。夜も、よく眠れない位寒かった。[青木] |