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[chronicles]
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1983年度をふり返って
石井秀行 |
58年度になり、夏季合宿には僕と大塚で好きな合宿を行い、冬季合宿で中三の教育に徹して僕らの身につけた物をすべて伝えて引退するという大筋を決めた。57年度につけた自信と意欲はあったものの、僕らにとって大きすぎる計画をたてても挫折するだけではないのかという不安もない訳ではなかった。そんな時期に唯一人の高一が退部した。57年11月には同期の一名が退部していた。結局、僕がリーダーになってから戦力である上級生の二人が退部したことになる。(下級生にも退部者がいたが、僕は少数精鋭の時代であったと思っている。)確かに戦力ダウンではあったものの、逆に大きな計画を実行してやるという気合が入ったのであった。これは退部していった者に、「僕が退部したので困っている。僕がいないから大きな計画をたてられない。」といった顔をされたくなかったからである。確かに57年度春季合宿の大川尾根からの五竜岳は、僕と大塚だけでは戦力不足であったかもしれない。しかしそれを実証されるのが耐え難かった。つまりこの時期に自信と意欲の他に意地が加わり不安の入る隙間をなくしてしまったのである。 |
この意気込みで夏には可能な限り大きい計画をたてて実行したつもりである。高二は13泊で南アルプスを全山縦走し、中三はリーダー学年を経験して南部縦走し、中一は2泊で塩見岳をアタックするというそれぞれに満足のいく合宿であったと思う。唯一つの負の要素としては、中二にとっては中一と同じ行程なので少し物足りなさを感じたであろうということである。当時中二の山中には申し訳なかったと思っている。しかし、これを除けば僕の考えていたような理想の合宿であったと思う。実際に合宿を行って、前半の連日の雨にもめげず南アルプス全山を縦走できて、十分成功と言える合宿であった。この合宿については合宿報告を読んで頂きたい。また、部員全員がいつまでもこの合宿を覚えていてほしいものである。 |
こうして僕の夢は実現し、最後の教育の場としての冬季合宿に挑んだのであった。この合宿では、輪かんをつけてのラッセルも、アイゼンを必要とする稜線もあり、一通りの教育の場にふさわしい場所であった。バラエティーに富んだコースで、中三も一通りの雪山は経験できて満足したと思う。また、中三で厳冬期の木曽駒ケ岳登頂は、大きな自信につながったことと思う。こうして僕はリーダーを金沢に引き継ぎ、1月満足感に浸りながら引退したのであった。 |
高二が引退してから最初の合宿は、南アルプス前衛に位置し比較的山が浅いが、一応の雪はあり雪山入門の山域の一つである鳳凰三山に決められた。しかしこの年の異常気象による豪雪のため、途中までしか行けなかった。それでも相当のラッセルをさせられたようだし、いい雪山経験の一つに数えられると思う。実際、59年度の冬季・春季両合宿は58年度の冬季・春季合宿が踏み台となって飛躍していると思う。58年度冬季合宿が終った時、厳冬期の寒さとラッセルの辛さに少々弱音をはいていた中二諸君にレベルアップは望めないと思っていた。ところが実際にリーダー学年を引き継いてみると、59年度冬季合宿で僕らより高度な合宿をしていると思う。山岳部のレベルアップに少しでも貢献できたのは何よりも嬉しいことである。 |
こうして山岳部リーダーとして最高に充実した一年半を過ごすことができた。これは、部長である増子先生・野本先生・平野先生、また代表指導委員の三品先輩を初めとする指導委員のOB諸氏からよきアドバイスをいただけたお蔭である。特に、僕が登山経験の基礎を築いた中一・中二の間に直接指導にあたって下さった当時リーダーの山内先輩の力は大であったと思う。山内先輩が熱心に教育に徹して下さらなかったら、僕がリーダーになっても僕らの好きな合宿は計画すらたてられなかったであろう。また山ではいつも僕より重い荷を背負ってくれ、いつも力を合わせて来た大塚、更には僕らのわがままについて来てくれた下級生の諸君、それらすべての力があってこその一年半であった。この場を借りて、僕の周りの方々全員に感謝の気持ちを伝えたいと思います。 (1986年記) |
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